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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、5月11日公開のファッション・ドキュメンタリー『私が靴を愛するワケ』。女性は靴が大好き! 靴はコレクター欲をそそるアイテムでもあり、指輪やブレスレットなどのアクセサリー、宝石と同じくらい女性にとって価値ある物なのです。

そんな靴の魅力を靴のスペシャリストや有名人たちが語っているのが映画『私が靴を愛するワケ』。靴の歴史、靴の魅力、コレクターたちの靴への愛。また靴に関する深い掘り下げは、驚くほどです。

この映画に登場する数々の靴フリークの有名人の中でも、いちばん強烈なのは、プロのポーカー・プレイヤーであり、米国版コスモポリタンに寄稿もしていたファッション通のベス・シャク。ズラリと並んだ靴に囲まれてのインタビュー。「え~、これ全部あなたの靴ですか?」と、記者はめまいがしそうでした。全部で1400足くらい持っていて、靴のクローゼットは3つも。「不幸なときでも、唯一、靴を買うときだけが幸せ」と語るベス。お気に入りの靴を愛しそうに見つめる目は、恋人に注がれる眼差しのようです。

パリ・オペラ座のダンサー、マリー=アニエス・ジローも靴への愛を語ります。バレリーナは足を痛めないようにハイヒールははかないのかと思ったら、意外にもマリーはハイヒールとトゥシューズの相性の良さを語ります。幼い頃のハイヒールのエピソードは微笑ましい限り!

しかし、何と言っても貴重なのは、靴のデザイナーとして一世を風靡し、いまなお根強い人気があるマノロ・ブラニクやクリスチャン・ルブタンなどのシューズデザイナーの登場でしょう。ブラニクがハイヒール作りのコツをつかむのに38年かかったこと、ルブタンは靴には男女ともにフェティシズムを感じると語ります。新しい靴を次々生み出してきた伝説のデザイナーである二人。話を聞けば聞くほど、彼らの靴が欲しくなりますね。

また数多くの女性がピンヒールについて語るシーンは女性なら誰もが共感できるでしょう。あの10センチ以上のピンヒールで上手に歩くのは至難の業。「みんなどうやって歩いているの?痛くならないの?」という疑問に、有名人やファッションのスペシャリストたちが答えてくれます。ネタバレになるのでこれ以上は書けませんが、それは「なるほど」と納得できるものばかり。

また靴とセックスの関係なども語られ、靴だけで、これほどの世界が広がるとは! 靴をモチーフにした映画は『イン・ハー・シューズ』『靴に恋して』などありますが、数々の靴映画が作られる理由が、この映画を見てわかった気がします。靴には女性の夢、ロマン、癒し、興奮など、いろいろな感情を湧き立たせる力があり、ファッションと芸術としての側面もあるという、枠に留まらない魅力に溢れたアイテム、それが靴なのです。

この映画の監督は新人ジュリー・ベナスラ。彼女は本作の依頼があったときのことをこう語っています。

「最初はとまどったわ。靴は好きだけど、靴が女性の生活においてどれほど重要かなんて考えたことなかったから。でも取材を進めていくうちに、靴への愛を語る女性たちに刺激されて、家で自分のシュークローゼットを見たの。そしたら50足もあってビックリ。あら、私“shoe-gal(靴好きな女の子)” だったのねって。自分が靴に弱いこと、この仕事をして初めて気づいたのよ」

この映画を見たあとは、ベナスラ監督みたいに自分の靴をチェックしたくなるかも。「あれ、けっこう持っている、自分もshoe-galだったんだ!」なんてことあるかもしれませんよ。
(映画ライター=斎藤 香)

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『私が靴を愛するワケ』
2013年5月11日公開
監督:ジュリー・ベナスラ
出演:ケリー・ローランド、ファーギー、ディタ・フォン・ティース、クリスチャン・ルブタン、マリー=アニエス・ジロー、マノロ・ブラニク、ベス・シャクほか
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