
[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今回ピックアップするのは大ヒット作『テルマエ・ロマエ』の続編『テルマエ・ロマエⅡ』です。古代ローマから日本にタイムスリップしたローマ人のお風呂映画という斬新なアイデアによる人気漫画の映画化は、日本人なのにローマ人役にピッタリな阿部寛という奇跡の主演男優を得て、大ブームを巻き起こしました。
その『テルマエ・ロマエ』の第二弾は、より日本全国の温泉をフューチャーしつつ、人間関係にも深みを加えて、見ごたえある作品になっています。
【物語】
日本で得たお風呂文化の知識を古代ローマに持ち帰り、斬新なテルマエ(浴場)を作った浴場設計技師のルシウス(阿部寛)。そんな彼に新たな難問が降りかかります。
それはコロッセオにグラディエーターを癒すテルマエを建設するというもの。またアイデアにつまったルシウスは現代日本にタイムスリップ。そしてお風呂ライターの真実(上戸彩)や平たい顔族と再会するのですが、古代ローマでは、平和推進派のハドリアヌスと武力行使派の元老院が対立。ルシウスはその闘いにも巻き込まれてしまうのです。
【日本の名湯がもう一人の主役?】
前作の『テルマエ・ロマエ』でもお風呂は頻繁に登場しましたが、どちらかといえば銭湯も含め、お風呂の在り方や日本のお風呂に関する基礎知識がメインで、それらがテルマエ作りの参考になったという印象がありました。
でもさすがにⅡ は、ルシウスにとってはすでに知っている日本のお風呂。そこで今回は日本の名湯やテーマパーク的なお風呂をより多く登場させています。物語は基本、原作の2~6巻を基にしていますが、製作陣がこだわったのは笑いをパワーアップさせることだったそうです。特にウォータースライダーもある温泉施設は、ルシウスにとっては初体験。目をギョロギョロさせて「なんだこれは!」と言いつつ、気が付けば遊び倒している姿は爆笑です。
ほか、風呂だけでなく、日本の生活にかかせない道具や食べ物もルシウスは体験。より深く日本を体感し、ローマとのギャップに右往左往する姿はもはやお約束ですがやっぱり楽しい。またローマ側の闘いのエピソードも描くことで、映画全体の厚みが増しているようです。
前作と比べて物足りなさの残る続編も多い中、『テルマエ・ロマエⅡ』はより面白さが増している成功作と言えるのではないでしょうか。
【役者たちが望んで続編決定!】
驚くべきは『テルマエ・ロマエⅡ』は、キャストの声が続編決定の鍵になったということです。大ヒット作の続編製作は珍しいことではありませんが、『テルマエ・ロマエⅡ』は製作陣が「ヒットしたから続編やりましょう」といって作られたのではなく、前作の撮影のときにキャストたちから「続編やろう」という声が上がったのだそうです。稲葉プロデューサーは、
「公開前に、キャスト陣から続編の話が出たのは初めてです。最初は1本で終わらせる予定だったのですが、多くの人から続編希望の声もあり、役者のみなさんもやる気があったので、完結編として作る事にしました」
と語っています。このシリーズは原作や映画のファンだけでなく、スタッフにも深く愛されている映画なのですね。
【Ⅱの撮影はブルガリアのオープンセットでも】
前作はイタリア・ローマのチネチッタで行われましたが、今回はブルガリア。ヨーロッパ最大級の撮影所「ヌ・ボヤナ・フィルム・スタジオ」です。ここに2012年10月から半年かけてオープンセットを建設。映画に登場するコロッセオはこの映画のために作られたものなのです。すごい!
ちなみに『エクスペンダブルス2』『300 〈スリーハンドレッド〉 〜帝国の進撃〜』もこの撮影所で作られたそうですよ。
【原作者も大感激の出来栄え!】
原作者のヤマザキマリさんは『テルマエ・ロマエⅡ』について、こう話します。
「前作がヒットしたおかげでものすごく忙しくなってしまい、ブルガリアロケに行けませんでした。前回のローマロケのときは、どこにでもヤマザキマリがいるという状態だったんですけどね(笑)。でも逆に試写をとても楽しみにできました。本作は『ベン・ハー』『グラディエーター』に並ぶ三大古代ローマ映画のひとつといってもいいくらい超スペクタクル映画です。こんなに古代ローマに情熱を注いでいるのが日本人と言うのはどういうことだ?と思うくらいです(笑)。運動して温泉に入ったくらいの感覚で映画館から出てこられますよ」
おお、原作者も太鼓判を押していますよ!
GW、旅行に行く計画のない人は『テルマエ・ロマエⅡ』を見て、温泉気分とグラディエーター気分を同時に味わうのもいいかもしれませんね!
執筆=斎藤 香(c) Pouch
『テルマエ・ロマエⅡ』
2014年4月26日より、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
監督: 武内英樹
出演: 阿部寛、上戸彩、北村一輝、竹内力、宍戸開、笹野高史、市村正親、キムラ緑子ほか
(C)2014「テルマエ・ロマエII」製作委員会




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