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【公開中☆超話題作シネマ批評】
映画ライター斎藤香が、超話題作だけど「まだポーチで取り上げていなかった~!」という映画の中から、作品をひとつ取り上げます。

人気漫画「土竜の唄」(高橋のぼる:著)を実写映画化した『土竜(モグラ)の唄 潜入捜査官REIJI』が大ヒット。再び登場した第2弾がこの作品、『土竜(モグラ)の唄 香港狂騒曲』(2016年12月23日公開)です。

今回も三池崇史監督の演出と宮藤官九郎氏の脚本で、「悪ふざけしすぎてませんか~」というような、にぎやかでバカバカしい作品に仕上がっています。

【物語】

交番勤務の冴えないおまわりさんだった菊川玲二(生田斗真)は、ある日突然、暴力団の数寄矢会の潜入捜査官に。身分はバレなかったものの、潜入捜査官のくせにクレイジーパピヨン(堤真一)に気に入られ、なんと義兄弟の契りを交わしてしまいます。

その後、警視庁のエース、兜(瑛太)が警察官とヤクザの癒着を上げようと躍起になり、潜入捜査官の玲二にターゲットを絞ります。

一方、玲二はチャイニーズマフィアの仙骨竜を叩きのめすことと、数寄矢会・会長の娘(本田翼)のボディガードになる指令を受けるのですが……。
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【芸能界の濃い顔、濃いキャラが大集合!】

前作ではダメ警官・玲二が潜入捜査官になり、ドタバタの果てに童貞を捨てたり、ヤクザと契を交わしたり、ガラリと変わった環境のもと、玲二が右往左往。しかしダメなわりに根性があって、まっすぐな玲二の性格がヤクザに認められ、うまくいってしまうというおもしろさがありました。

とにかく登場人物は “濃い顔、濃いキャラ” で統一したような、『テルマエ・ロマエ』にも負けない濃い軍団で実に劇画チック。それは続編の本作でも引き続き健在です。

このシリーズはおそらく、どぎついヴィジュアルや濃厚なキャラを前面に押し出し、どこまで映画で描けるかに力を注いでいるような気がします。

感動させようとか、センスよく見せようとか、そんな気負いはなく、どぎつく暑苦しいキャラクターの世界観をしっかり描こうというもので、くだらなさMAXの映画ですが、取組みは実に真面目です。役者さんたちも決死のオーバーアクトですよ。生田斗真はこの映画で、かなりの顔芸を習得したのではないでしょうか?
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【悪女道をまい進する菜々緒】

本作で「土竜」組に仲間入りしたのが、瑛太、菜々緒、本田翼の3人です。

菜々緒は、敵対するチャイニーズマフィアのヒットガールを演じています。抜群のプロポーションでアクションを繰り広げる姿はかっこ良く、菜々緒に悪女はよく似合うのですが「いつまでこういう役ばかりやってるのかなあ……」とも。悪女道をまい進する覚悟ならば、アクションを磨いて『バイオハザード』のミラ・ジョヴォヴィッチのようにアクション映画に主演するか、『氷の微笑』のシャロン・ストーンみたいに体をはったセクシー悪女になるか……。まあ、これは余計なお世話かもしれません。

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本田翼は、お嬢さま風に登場して実は最強のワガママという設定ですが、性悪っぷりがなかなかお似合い。瑛太は暑苦しいメンツの中でちょっと浮いていたかも。バカになりきれない役だっただけに、少々残念でした。
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【脇が巧いと映画が締まる!】

前作同様に、玲二を真っ裸(新聞紙付き)で頑張った生田斗真は体当たり演技だけでなく、主演にふさわしい存在感と華やかさがありますが、この映画のキモは脇役のベテランですね。堤真一、古田新太の怪演が、かなりこの映画を支えていると思います。ここが力不足だと、どんなに生田が頑張ってもガタガタになってしまいますが、ベテランが余裕の芝居。最強の義足を駆使して活躍するクレイジーパピヨン(堤)と、破壊王のモモンガ(古田)の怪演技は楽しいですよ。

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とにかく、バカバカしさにかけては右に出るものはいない映画になっています。前作が未見ならばDVDで見てから新作を見てもいいですし、まあ別に見ていなくても、そんなにややこしいストーリーではないので無問題。正直、泣けるような感動はありませんが、とにかく楽しくてにぎやかな映画が見たいという人にオススメ。お正月の初笑いに最適な映画と言えるでしょう。

執筆=斎藤 香(c)Pouch

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『土竜(モグラ)の唄 香港狂騒曲』
(TOHOシネマズ六本木ヒルズほか 全国ロードショー中)
監督:三池崇史
出演:生田斗真、瑛太、本田翼、古田新太、菜々緒、上地雄輔、仲里依紗、堤真一ほか
(C)2016「土竜の唄 香港狂騒曲」 製作委員会 (C)高橋のぼる・小学館

▼「土竜の唄 香港狂騒曲」予告