【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。
今回ピックアップするのは、生田斗真さんとヤン・イクチュンさんのW主演作『告白 コンフェッション』(2024年5月31日公開)です。試写で鑑賞しましたが、どちらもめちゃくちゃ濃くて常にハイテンションでした!
では、物語からいってみましょう。
【物語】
浅井啓介(生田斗真さん)とリョウ・ジヨン(ヤン・イクチュンさん)は、大学山岳部のOB仲間。ふたりは16年前、卒業登山で行方不明になり、事故死とされている同級生の西田さゆり(奈緒さん)の17回忌の慰霊登山に出かけました。
ところが、ふたりは猛吹雪の雪山で遭難。しかも足に大怪我を負ってしまったリョウはもう生きて帰れないと思い、啓介に「実は自分がさゆりを殺した」と告白しはじめるのですが……。
【死ぬつもりだったのに】
最初は軽いユーモアもありましたが、全編を通してハイテンションで繰り広げられる本作。いい意味で想像以上のくどさでした。
さゆりの慰霊登山中にふたりが遭難→死を確信したリョウが殺人の告白→雪山で死ぬ
……はずだったのに、山小屋を見つけ一命を取り留めたのです。
そのときのリョウの「あれ…こっからどうしよう俺」みたいな気まずそうなところが、ちょっと可笑しくてツボでした。大変な告白をして死ぬつもりだったのに。
【浅井の態度が怪しくなっていく】
でもそんな気まずさも束の間。リョウの殺人の告白を聞いた浅井が驚いて怒り狂う、と思ったら彼は動じません。怒りもしないし、16年前のことだから、とリョウを責めないんです。
いや、親友が16年も隠し事をして、しかも仲間を殺したんですよ!
その落ち着いた様子は、観ているこちらからすれば腑に落ちない。と同時に「これ浅井も何か隠してる?」と思うわけです。そしてリョウも同じようなことを感じ始め、彼への疑惑が大きくなっていく……。
【密室での男ふたりの命懸けのガチ喧嘩】
疑惑を黙っていられないリョウ。何かを隠し通したい浅井。
ふたりの探り合いが始まり、そのやりとりは熱を帯びてきて、だんだん叫びあいになり、殴り合いになり、山小屋での命懸けの追いかけっこへと発展していくのです。
生田さんとイクチュンさんの芝居もハイテンションですごかった。血管切れそうなほど力が入っていて、ずっとゼェゼェハァハァ。
観ているこちらも体に力が入り、観終わったあと疲れちゃいましたよ。こんなに体力を使う映画だったとは!
【ヒロインが不憫すぎる!】
映画は男ふたりの山小屋ファイトが中心。ですが、そのきっかけとなったのは、さゆりという女性の存在。
殺された上に次々と明かされる真実は、彼女にとっては辛いこと過ぎて、さゆりの気持ちを思うと胸が痛みましたし、浅井とリョウに対して「アンタたち、何てことしてくれるのよ!」という怒りも湧いてきました。
もはや、ふたりの闘いに参戦して、グーパンチをしたい気持ちになりましたよ!
そうそう、この映画には特筆すべきことがもうひとつありました。なんと尺が74分! 面白さをグッと凝縮したんですね。
演出は山下敦弘監督。山下監督のアクション系映画は初めて観たので、これもまた新鮮な驚きでした!
執筆:斎藤香(c)Pouch
『告白 コンフェッション』
(2024年5月31日より全国ロードショー)
監督:山下敦弘
原作:福本伸行 かわぐちかいじ 『告白 コンフェッション』(講談社「ヤンマガKC」刊)
出演:生田斗真 ヤン・イクチュン 奈緒
主題歌:「殺意vs殺意(共犯:生田斗真)」マキシマム ザ ホルモン
©2024 福本伸行・かわぐちかいじ/講談社/『告白 コンフェッション』製作委員会
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