【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、レビューをします。

今回ピックアップするのは、吉田羊さん主演映画『ラブ×ドック』(2018年5月11日公開)です。監督&脚本は、鈴木おさむさん。「クイズプレゼンバラエティー Qさま!!」(テレビ朝日系)など、バラエティ番組を多数手がけている放送作家のイメージが強いのですが、『新宿スワン』など、映画の脚本も執筆しているのです。その鈴木さんがついに『ラブ×ドック』で映画監督デビュー! では物語からいってみましょう。

【物語】

パティシエの剛田飛鳥(吉田羊)は、恋愛で失敗を繰り返していました。そのたびに仕事を失ったり、友情を壊したり……。「もうすぐ40歳なのに、私は何やってんの~!」と、気持ちが凹んでいます。

そんなときに恋愛遺伝子クリニック「ラブドック」と出会いました。クリニックの女医の冬木玲子(広末涼子)は「恋愛は遺伝子で決まる」と語り、飛鳥の遺伝子から抽出した薬を彼女に渡します。

飛鳥は、恋愛の失敗を回避して、幸福を手に入れることができるのでしょうか?

【言い寄られたら親友の好きな人とも恋しちゃう】

飛鳥は、仕事をしているときはクールなやり手ですが、男の前では可愛い女性。ちょっと恋愛に流されがちな一面があり、それがトラブルに発展しちゃうんですね。でもそれらは女性なら「わかる~」とうなずける「恋愛あるある」エピソード。飛鳥が抱える恋愛問題は、多くの女性が経験したり、感じたりしたことがある女のズルさとイタさなのです。

例えば飛鳥には親友・千種(大久保佳代子)がいます。何でも話せる間柄なので、飛鳥は彼女がジムのトレーナー野村俊介(玉木宏)に片思いしているのも知っていて、うまくいくように応援しているのですが、飛鳥はそのトレーナーに言い寄られるとコロリ。「ダメダメ」と思っても、心のどこかで「彼は私を選んだ」と親友に対して優越感を抱いてしまうのです。

【ダメ恋に流されるのはアラフォーの焦り?】

また上司(吉田鋼太郎)に言い寄られたときも不倫と知りつつも、流れに身を任せてしまう……。言い寄られると弱いのは、アラフォーという年齢もあるかもしれません。「これが最後のモテ期!」という気持ちが、相手を受け入れる隙を作ってしまい「やめときな~」という方向へ飛び込んでしまうのではないかと。

【恋愛遺伝子の薬の効果やいかに?】

そんな自分にウンザリしているときに、遺伝子による恋愛治療薬「ラブドック」に出会い「ダメな恋ばかりする自分を変えたい!」と飛び込むのです。最初は遺伝子話を聞いても半信半疑で「そんな話に大人の私がだまされるとでも?」みたいな態度なのですが、好奇心の強さと今の状態を何とかしたい気持ちが、胡散臭いと怪しむ気持ちを上回り「ラブドック」の薬を注入します。

さて「ラブドッグ」を注入して、飛鳥は恋愛の失敗は回避できたでしょうか? 詳しくは映画を見ていただきたいのですが、ひとつだけ飛鳥が気付いたことをお教えします。それは「無駄な恋なんてない」ということ。挫折したり傷ついたりして得た感情も幸福と同じくらい大切だと感じるようになるのです。

この映画はアラフォーがヒロインですが、アラサーの皆さん、明日は我が身ですよ。グッサグサ刺さる人いると思います。

【羊さんの新境地かも】

本作はオリジナルストーリーによるラブコメ映画で”クールなキャリアウーマン”というイメージが強い吉田羊さんが、年上、ひと回り年下、同年代という3つの世代との恋を経験する姿が貴重です。相手役が吉田鋼太郎さん(不倫)野村周平さん(年下)玉木宏さん(親友の片思いの相手)というのも贅沢キャスティングですね!

恋する羊さんはとても可愛いし、うまくいかなくてブチ切れる姿も楽しいし、最後にアラフォー女性の本音を絶叫するシーンは鳥肌ものの感動ですよ。本作は吉田羊の新境地開拓ではないでしょうか。

ちなみに本作は女子同士で見ることをオススメ。自分の恋に置き換えて、いろいろ思い出すことがありそうだし、鑑賞後に恋愛についていろいろおしゃべりできる映画ですよ。

執筆=斎藤香 (c)Pouch

ラブ×ドック
(2018年5月11日より、TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー)
監督&脚本:鈴木おさむ
出演:吉田羊、野村周平、大久保佳代子、篠原篤、唐田えりか、川畑要、山田純大、音尾琢真、大鶴義丹、成田凌、広末涼子、吉田鋼太郎、玉木宏
(c)2018『ラブ×ドック』製作委員会