【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回はモンキー・パンチ原作の「ルパン三世」の劇場版『ルパン三世 THE FIRST』(2019年12月6日公開)です。

原作は1967年に「漫画アクション」で連載がスタートしたという、けっこう古い漫画なんですけど、ぜんっぜん色あせないのが「ルパン三世」の凄さ! その「ルパン三世」が初の3DCGでスクリーンに登場しました!

【物語】

莫大な財産を手に入れられるお宝ブレッソン・ダイアリー。祖父のアルセーヌ・ルパンも手に入れられなかった秘宝を、ルパン三世と峰不二子、それぞれが狙っていました。いざ盗み決行!というときに現れたのがレティシア。彼女もダイアリーを狙っていたのです。しかし、レティシアの背後には、育ての親ランベールと謎の男ゲラルトが。2人の目的とは……。

【山崎貴監督の描く3DCG『ルパン三世』はゴージャス!】

やはり映画のオープニングで「ルパン三世」のテーマソングが流れると、ワクワクしますね! 監督は、菅田将暉主演の傑作『アルキメデスの大戦』の山崎貴監督、さすが映像にこだわる山崎監督だけあって、ルパンがすごくゴージャスになりました。人物の動きはなめらかで、服の質感やなびく髪など本物のよう。何より顔が綺麗。目はキラキラ肌ツルツルです。

とはいえ、もちろんルパンのキャラはそのまま。ブレッソン・ダイアリーを盗み出そうと変装して忍び込み、シャンデリアに乗っかって逃げたり、屋根に飛び乗って追っ手から逃げたり、軽妙なアクションは健在。本作は4DXやMX4Dでも上映されるので、それで見たら、迫力マシマシでしょう!

【『ルパン三世 カリオストロの城』の影響大?】

本作の鍵となるブレッソン・ダイアリーをめぐり、ルパンは謎の組織と闘うのですが、二者の間に入るのが、ヒロインのレティシアです。彼女は育ての親ランベールの企みのために、いいように使われていたのですが、ルパンに助けられ、自分らしく生きる道を模索します。レティシアのまっすぐで純真なキャラクターは『ルパン三世 カリオストロの城』クラリスにソックリ!

知らない方のために簡単に説明しますと、『ルパン三世 カリオストロの城』は、あの宮﨑駿監督が演出した劇場版アニメで、大傑作と言われている作品。ヒロインのクラリスは、運命に抗えずに苦しんでいるところをルパン三世に助けられるのです。クラリスとレティシアはルパンとの関係性がよく似ていて、影響を強く受けていることがわかります。ルパンの新作を観ながら『カリオストロの城』の偉大さと、けなげなクラリスをしみじみ思い出しちゃいました……。

【後半になるにしたがって壮大になりすぎる物語】

後半はブレッソン・ダイアリーの秘密が解かれ、世界を揺るがす大惨事か!という展開になっていくのですが、もはや泥棒が取り扱う案件ではないほど壮大で、ちょっと目が点に……。

よく言えばイマドキな展開で、このくらいやらないとウケないのかなと思ったりもしましたが、これは観る人が「何をルパンに求めるか」で違ってくるかもしれない。ルパン三世の新しい世界を観たいならばいいのかも???

【声優陣では小林清志さんと吉田鋼太郎さんが素晴らしい!】

今作は声優陣も豪華。ヒロインのレティシアの声を広瀬すずさんが、謎の男ゲラルトの声を藤原竜也さんが演じていることでも話題になっています。声優陣の中で突出しているのは、まずルパンの相棒である次元大介をアニメ初期から演じている小林清志さん。御年86歳! あいかわらず渋く素敵な声で次元を演じきっていて感動です!

そしてもうひとりは、ブレッソン・ダイヤリーに狂わされていくランベールを演じた吉田鋼太郎さん。レティシアへの親心と自身の野望とのせめぎあいなど、きめ細かい演技で、映画を観ている間、吉田鋼太郎さんが声をあてていることを忘れていました、素晴らしい! 

ちなみにサブタイトルの「THE FIRST」は、アルセーヌ・ルパンが初めて盗みだすことに失敗したお宝であることに加え、シリーズ初の3DCG作品という意味があるそうです。
華やかで楽しい作品なので、デートムービーにもなりそうだし、女子同士でも盛り上がれますよ。ぜひぜひ~!

執筆=斎藤 香 (c)Pouch

ルパン三世 THE FIRST
(2019年12月6日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督・脚本:山崎貴
原作:モンキー・パンチ
声の出演:栗田貫一、小林清志、浪川大輔、沢城みゆき、山寺宏一、広瀬すず、吉田鋼太郎、藤原竜也
(c)モンキー・パンチ/2019映画「ルパン三世」製作委員会