【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(2020年10月16日公開)です。

映画業界で「前売りがすごい勢いで売れているらしい」「早朝から深夜まで上映する劇場もあるそうだ」など噂され『鬼滅の刃』は、とんでもない盛り上がりを見せております。これは「観なくては!」と思った私。調べたらNetflixで同作のアニメが配信されているではありませんか。

さっそく予習して『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を初日に観に行きました。『鬼滅の刃』ビギナーですが、楽しめましたよ! では物語から。

【物語】

家族を鬼に惨殺された竈門炭治郎(かまど・たんじろう)。唯一生き残った妹の禰豆子(ねずこ)は鬼と化してしまい、炭治郎は鬼への復讐に燃えていました。彼は妹を人間に戻し、家族の敵を討つために、鬼狩りをする“鬼殺隊”の一員に。数々の鬼と闘いながら、炭治郎は剣術のスキルと精神力を磨いていきます。

彼は仲間の我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)と嘴平伊之助(はしびら・いのすけ)と共に、短期間に40名以上の行方不明者を出している無限列車に乗り込むことになります。しかし、そこでは下弦の壱・魘夢(かげんのいち・えんむ)が炭治郎の命を狙っていました。炭治郎たちは“鬼殺隊”の最高位、柱のひとりである煉󠄁獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)と合流し、魘夢と壮絶なバトルを繰り広げていくのですが……。

【予習は必須!第1話とシーズン1の最終話を要チェック】

結果から言いますと「面白かったです!」。

本作はアニメの最終話の続きから始まり、『鬼滅の刃』について知っている人に向けた劇場版になっています。

Netflixで予習をしていったから、すんなり物語に入っていけましたが、これまでの物語の流れや登場人物の説明はないので、多少なりともアニメを観ていないと乗れない可能性大です。

とはいえ、アニメは全26話ありますので、全部見るのは難しいかもしれません。

アニメ第1話は、炭治郎と禰豆子に起こった出来事が実にわかりやすく描かれており、最終話では、無限列車の下弦の壱・魘夢がなぜ炭治郎の命を狙うのか。その理由も明かされています。

最低限、第1話と最終話を押さえておけば、映画は楽しめると思います。

【意外とグロテスクなダークファンタジー】

シリーズ累計発行部数1億部を突破した漫画「鬼滅の刃」は、大正時代を舞台にしたダークファンタジーですが、驚いたのはけっこうグロテスクな描写が多く、流れる血の量もハンパないことです。

アニメの第1話で、炭治郎が不在のときに家族が鬼に惨殺されるのですが、彼が家に戻ってきたときは地獄絵図で、炭治郎と同じくらい見ているこっちも大ショックでしたよ! でも、残酷だったからこそ「鬼を絶対に許さない!」という彼の気持ちにすごく共感できたし、妹を助け、敵を討つという炭治郎の過酷な旅を見守りたい気持ちになれました。

【登場人物のキャラが魅力的、鬼も素敵!】

『鬼滅の刃』のブームについて、アニメを見るまではピンときていなかったのですが、今回アニメと映画を観て、やはりキャラクターの魅力だなあと思いましたね。

主人公の炭治郎は本当に汚れのない男子で、正義感と家族愛がイジョーなくらい強い正統派の主人公。妹の禰豆子も清純女子ですが、その彼女が鬼と化してしまうという展開が面白いです。

また本作で炭治郎と同じレベルの存在感を放っているのは、煉󠄁獄杏寿郎。炎の剣術で闘うアニキ肌の熱血漢。彼がめちゃくちゃ強い! 強いんだけど……ここから先は映画を観てほしいのですが、どんな誘惑にも揺るがない強い心を持った男女ともに惚れるイケメン剣士でした。

個人的には、鬼も魅力的なところが印象的でした。敵は強いほど物語は面白くなるし、本作に登場する下弦の壱・魘夢は独特なしゃべり方と中性的なルックスが良かったです。魘夢は、鬼舞辻無惨(きぶつじ むざん/鬼のラスボス)が率いる鬼軍団の中でも下位レベルの鬼なのですが、ラスボスに血を分けてもらいパワーアップして本作に登場。

上位レベルの鬼になりたいと必死です。鬼の世界にもカーストがあり、ラスボスにちょっとでも意見すると瞬殺されるなど、敵役の鬼にもドラマがあるところが見応えに繋がっています。

【少年ジャンプのスピリットと暗黒世界のコラボ】

『鬼滅の刃』は週刊少年ジャンプで連載されていたのですが、「友情・努力・勝利」のジャンプのキーワードをしっかり守っています。本作はこれに加えて「家族」の影響も強いですね。

炭治郎はまさに家族のために命がけの闘いに身を投じてますから。またヴィジュアルも綺麗!

鬼殺隊と鬼のバトルシーンは鮮やかでスピード感もあり、迫力と美がいいバランス。また鬼殺隊、鬼、それぞれが必殺技を次々と繰り出すので、それがもう楽しくて! また本作は無限列車内での闘いがメインなので、逃げ場がないスリルが面白さに拍車をかけていました!。

ディズニーやユニバーサルなどの海外アニメにはない、日本のアニメらしさが詰め込まれた作品だと思います。

執筆:斎藤 香 (c)Pouch

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編
(2020年10月16日より、TOHO シネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
声の出演:竈門炭治郎(かまど・たんじろう):花江夏樹、竈門禰豆子(かまど・ねずこ)※1:鬼頭明里、我妻善逸(あがつま・ぜんいつ):下野紘、嘴平伊之助(はしびら・いのすけ):松岡禎丞、煉󠄁獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)※2:日野聡、魘夢(下弦の壱)(えんむ・かげんのいち):平川大輔

※1 禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正しい表記となります。
※2 煉󠄁獄杏寿郎の、“れん”の漢字は「煉󠄁」が正しい表記となります。

(c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable