【連載 私がイモムシから蝶になるまで】

自分に似合う服が選べるようになった梶本さん。どんどん新しい自分に生まれ変わっていきますが、周囲からの反応は……? 

パーソナルカラー診断の結果をもとに新たな自分を開拓していった私だったが、容姿の変化と同時に一抹の不安が生まれたのだった。

【容姿と性格のギャップに苦悩】

クールウィンターで高身長の私はネイビーのアイライナーや黒革のピンヒールにタイトな白パンツを合わせたモノトーンコーデで美人度が上がることがわかった。

こうした装いは「寒い」「歩きづらい」「楽じゃない」などといったマイナス面もあったが、オシャレは努力! と可能な範囲で取り入れるようにした。

ピンクゴールドの華奢なアクセサリーから大ぶりなシルバーアクセに、マット肌でピュアさ重視のナチュラルメイクからツヤ肌でアイラインばっちりの強い女メイクに、私の容姿はみるみる変わっていった。

あまりの変化に自分でもついていけず、化粧を落とした時のモッサリとした本来の姿にホッとする瞬間さえあったが、そこまで変われているという喜びもあった。

ある日、styling//の黒のノースリーブワンピースにワイドパンツ、united nudeの10cmヒールサンダルという黒装束で埼京線のホームを闊歩しているとあることに気づいた。

モーゼが海を割るように人々が私を避けて通るのだ。

ヒールを履くと190cm近くになる黒い女はみんな怖いのか。このままでは私の姿が都市伝説か怪談になりかねない、と意識して彩色を取り入れたが、結果は同じだった。

毎日のように見知らぬ高齢者に世間話を振られていた私が道さえ尋ねられず、ショップ店員さんにさえ話しかけられない。

どうやら私が似合う装いをすると性格がキツくサバサバとした印象に見えるのだ。


これは看護師の私にとっては痛手である。

日々忙殺されて虚勢を張っている私が怖さを足してしまったらそれはもう鬼に金棒、焼け石にバーナー、茶わん蒸しの卵とじだ!

要するにもう十分すぎるほどおっかないのに得意分野に寄せたら白衣の天使のイメージである「親しみやすさ」や「癒しの存在」からどんどん遠ざかるじゃないか!ということである。

【強い女になった私に夫は……】

さらに心配なのは夫の反応だった。

オシャレをして出かける時も私の姿を見るのは私よりも夫のほうが多い。好みでない女と一緒に歩くのなんて嫌なんじゃないか……。

私は夫に心底惚れこんでいたので、「結婚後にファッションやスタイルが変わってしまうなんて詐欺だ! 別れよう!」なんて言われてしまうのではないかと日夜不安に思っていた。

ある日その想いを正直に吐露したところ、夫はこう言った。

「どの君も綺麗だけど、最近は楽しそうなのがすごくいいね。君が変わっていくのを見てると俺も楽しいよ!」

菩薩!!!!! 合掌!!!!!

そこからはもうなりふり構わず良いと思ったものをガンガン身に着けてバンバン胸を張ることにした。一歩街へ繰り出せばそこはランウェイ。

他人が振り返れば「自分、綺麗失礼します」の精神である。

今までだったら「また身長がデカいからってジロジロ見やがって…」と苛立っていただろう。

ファッションから徐々に意識改革が始まっていた。

【おのずと生まれた複数の顔】

パーソナルカラーが冬の場合クールでシャープなスタイルが似合う一方で、怖くてとっつきにくい印象にもなる……ということがわかってきた。

そこで私は、他のスペックにもそれぞれの特徴があるのではないかと思い、自分の季節以外のパーソナルカラーのことも調べてみることにした。

パーソナルカラー診断を受ける前に私が妄信していた「暖色は優しく見える」という理論は正しくはなかったが、あながち間違いでもなかった。

親近感を抱かせたい場合は多少顔がくすんだとしても黄みを含んだアイシャドウを使って目元を柔らかく見せたり、本来はほとんど塗らない方が洗練されて見えるチークも普段よりほんの少し強調して血色を足すことで血の通った人間みを演出してみる。

くすみ禁でカバー力最重視のアンドロイド女のようなメイクが似合う私も、肌を作りこまずナチュラルにすることでそばかすガールのような素朴でピュアな雰囲気をまとってみる。

あえて自分の似合うスペックから外すことで、印象は調整できる!

要するに色も系統も使い方なのだ。

そういった学びを得た後は、自分をどう印象づけたいかによって服装やメイクを少しずつ変えるようになった。

看護師として優しく見られたい場面ではすっぴんに近いナチュラルメイクに、強気にいきたいときはイメコンスペックに寄せた強いお姉さん、初対面の人を多く含む社交の場では服装はクールでもメイクは目元を柔らかくして親しみやすさを持たせるなど、様々な顔の私が生まれた

人の顔なんてひとつじゃなくて良い。

理解してほしい内面や、自分にないものだって諦めなくていい。

それに近づけるための技術と知識がイメージコンサルティングであり、私たちに勇気をくれるのだ。

次回、「骨格と顔タイプで喧嘩すんな!」イメコン沼ズブズブでお送りする予定! 乞うご期待!

執筆・撮影:梶本時代 (c)Pouch

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