お絵描きっ子のみんなぁ、集合ーッ! 前回から始まった新コーナー『禁断マンガ道場』の時間がやってまいりました。悩める漫画家・イラストレーターたちからの相談を募り、なぞの漫画家・テリーヌ富士子先生が一刀両断、解決に導くという企画です。続々とお悩みも届いていますよ!

今回の相談は、ずばり「木や葉っぱの描き方」! お悩みを送ってくれたのはペンネーム「山内eX」さん。詳しい相談内容は以下のとおりです。

「たまにどうしても背景に木を描きたくなるときがあるのですが、描くのが面倒くさくていつも途中で嫌になってしまいます。参考までに添付した木を描くときも、葉の二枚目あたりからすでに描くのが嫌になってました。(中略)テリーヌ先生は背景に楽に木を描きこむ方法をご存じないでしょうか?」

……とのこと。この相談に対し、テリーヌ先生は「わかるわぁ……」と深くため息をついたあと、「わかる……けど、こんなことで悩んでいるなんて時間のムダ! あなたは葉っぱを描くために漫画家になったの? 違うでしょ? じゃあ手を抜きなさいよ」と、強い口調で手抜き推進してきました。

それでは心してお読み下さい。「絶対に真似をしてはならない木や葉っぱの描き方10選」です!

その1:『季節設定を冬にしろ』
のっけから「描き方」ではありませんが、まず考えるべきは「いかにして描かないで済ませるか」であるとテリーヌ先生は説きます。人には得手不得手がある、と。葉っぱを描きたくないならば、季節を冬にしたり葉っぱのない樹木を描け、と。描きたくないなら設定ごと変えちまえということらしいです。

「左のパンチがヘタならば、右のパンチを最強にしろ。ラーメンがまずいラーメン屋なら、下手に悪あがきはせずチャーハンを最強にしろ。体育がダメなら勉強しろ。音楽がダメなら図工を伸ばせ。これが私の生き方です」と言うように、苦手なものより得意なものを伸ばせ系の考え方のようです。

その2:『1枚だけ描いてあとはコピペ』
今回の相談者も「葉の二枚目あたりからすでに描くのが嫌になってました。」と証言しているように、どんなめんどくさがり屋さんでも1枚だけなら描けます。その1枚をコピペ(コピー&貼り付け)しまくり、葉のない木々に緑の葉っぱを咲かせましょう的な手法がこの『1枚だけ描いてあとはコピペ』です。

さらにクオリティを高めたいのならば、1枚だけではなくもう1枚、合計2枚描けば完璧だとテリーヌ先生は助言します。「1枚はテキトーな葉っぱ。もう1枚は、やや手の込んだ葉っぱ。テキトーな葉っぱでおおまかに茂らせて、手の込んだ葉っぱをスパイス的に混ぜると『描いている感』が出ますよ」とのこと。

その3:『描くのが嫌になったところまでの葉っぱをコピペしてごまかせ』
結局、最後まで描ききれませんでした。途中で飽きてしまいました。非常によくある話です。では、なぜそうなるのか? 答えは分かりきっています。その木が主役じゃないからです。背景だからメンドクサイ。でも、飽きたら飽きたで解決法があります。デジタルマンガだったら、いくらでもごまかせます。

描いたところまでを有効活用し、うまいこと組み合わせ、みどり生い茂る一本の樹木にしてしまえば良いのです。「この方法は罪悪感も比較的すくな目だから、生真面目な人には特にオススメしたいテクニックだわよ」。がんばったところまででいい。悲しむことはない。そこまでがんばったんだから。

その4:『実際の葉っぱを1枚スキャン、イラスト調にし、あとはコピペ』
もう描くのが面倒だったら、「実物を使っちまえ」とテリーヌ先生は静かに言います。実物に勝るデティールなし。スキャナに葉っぱを入れて、もしくは葉っぱをデジカメなどで撮影し、輪郭を切り取って色を補正。一色マンガだったらモノクロに。グレースケールでも良いでしょう。カラーだったらそのままで。

準備できた葉っぱの素材を、丸ぼうずの樹木にポンポンポン、とスタンプ的にコピペします。「スタンプ作っちゃうってのもアリだわね。消しゴムで葉っぱのスタンプ作っちゃうの。それをトントントン……って押すだけで生い茂る樹木の完成みたいな!」とも言っております。

その5:『もっこり風の木にしちまえ』
みなさんは木を描くとき、どう描きますか? おそらく多くの人たちが、ブロッコリーのような「もっこり風の木」を描くと思います。幹を描いて、モヤモヤモヤと輪郭を描く。そして中身に着色する。そんだけで「木」に見えますよね? それでいいんです。テリーヌ先生も「それでいいんです」と言います。

もしも木が主役だったら、この手法は使えないかもしれません。しかし、単なる背景であるならば、「もっこり木でいいじゃない。一瞬で過ぎ去る木のコマでいいじゃない。それが『木』であると読者が判断すればいいの。読者の脳みそに『木』ってことを刷り込めばいいの。アイコンなの」と!

その6:『スクリーントーンでいいじゃん』
マンガやイラストのデジタル化が進み、ますます手が抜きやすくなったとテリーヌ先生は満面の笑みで語ります。「とはいっても、昔から木が描かれているスクリーントーンとかは出ていたわよ。ペタっと貼るだけで、それは『木』よね。だってプロが描いているんだから。安心しておまかせできる」と。

しかしながら、オススメなのはやはりデジタル。「実際にペタリと紙に貼り付けるトーンって高いじゃない。私はやーよ、そんな出費。だって金稼ぐために描いているんだから」とシビアすぎるプロの意見も。その一方で、「でも私は出来合いのトーンでごまかすテクは、実はめったにやらないんだ。だってだって、あまりにも手抜きの芸がなさすぎるから」と、手抜き道のコダワリを垣間見せたりもしております。

その7:『カスタムブラシをうまく使え』
これはかなりの高等テクです。デジタルで漫画やイラストを描いている人限定の必殺技となります。デジタルで漫画を描く人必須のソフトといえば、漫画ソフトの『ComicStudio(コミックスタジオ)』や、レタッチソフトの『Photoshop(フォトショップ)』などが挙げられますが、それらソフトにはペンでなぞるだけで葉っぱが次々と描けるペン(ブラシ)が用意されているといいます。

「デフォルトでもたくさん入ってるから。それでゴマカシちゃえばイイんじゃないかな? こだわる人は、自分でカスタムブラシを作ればイイ。『自分だけの葉っぱ専用ブラシ』を作ればイイ。幹や枝に沿って、そのペンでなぞれば緑生い茂る樹木の完成よ。詳しいやり方は説明書を見てね」とのこと。

その8:『樹木をメチャクチャ描き込んで注目を集めろ』
出ました、テリーヌ先生お得意の「視線の誤誘導」テクニックです。見せたくないものを隠すように他の部分を目立たせるという、マジック(手品)テクの基本中の基本。今回の相談は「木や葉っぱの描き方」、さらに「葉っぱを描くのがメンドイ」とのことなので、テリーヌ先生は木の幹に注目しました。

「黒点描いてウーネウネ。黒点描いてウーネウネ。なんだかよくわからないけど、こうやって歌うと楽しいのよね。あたしはいつもこう描いているよ。で、黒点ウネウネの樹木描くと、なんだかよくわからない『描きこんだ感』が出るのよね。正しいのかよくわからない『やってるぞ感』が。ごまかしだけど」とのこと。

その9:『墨汁と筆で「フッ!」して芸術的樹木を作り出し、それを繰り返し使え』
嫌なモンは楽しく乗り切れ。これがテリーヌ先生のモットーだそうです。さらに、「どーでもいいことにリキを入れて、手抜きとかそういう次元じゃなくしちまえ」というのも大事なのだとか。そこでテリーヌ先生がオススメするのが、墨汁と筆を使ったアートです。

墨汁一滴を画用紙に垂らし、「フッ」と息を吹きかけて樹木を作ります。その後、筆に墨汁を染みこませ、集中して「フッ!」と息を吹きかけます。トントントンと、筆を指で叩いて墨汁の飛沫を垂らすのも良いでしょう。すると……なんということでしょう! 荒々しい樹木のアートが完成したではありませんか!

その10:『写真をそのまま使え』
最後はやはり写真です。テリーヌ先生は写真の使用に人一倍こだわっています。1枚スキャンしてコピペとか、そういう次元ではなく、「そのまんまいったれ」とのことであります。

テリーヌ先生はこう言います。「いい木や、いい葉、いい景色があったら、すかさず写真を撮っておきましょう。それはあなたの武器になります。そのまま使う勇気さえあれば、の話ですが」と。

――長くなりましたが、以上10選、いかがだったでしょうか? 最後にテリーヌ先生はこう言います。「いつぞやも言いましたが、要するに『そう見えればいい』んです。そう認識させればいい。読者の脳みそに『それ』を刷り込めばいい。誰に何を言われようと、私はそう思ってる」と。

(文=長州ちなみ / イラスト・漫画・取材協力=テリーヌ富士子 / 相談者・画像=山内eX)

※テリーヌ先生への相談・お悩み大募集しまーす!! 詳しくは以下ページから。
これ→【禁断マンガ道場】漫画やイラストで悩みがあったらテリーヌ富士子先生に相談しよう!

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