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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、「あしたのパスタはアルデンテ」のフェルザン・オズペテク監督によるヒューマンラブストーリー作品。イタリア映画『カプチーノはお熱いうちに』(2015年9月19日公開)です。

南イタリアの風光明媚なレッチェという街を舞台に、カフェで働くヒロインの人生を描いた物語。第一印象最悪男と意外にも結ばれた彼女が、後半、思いがけない急展開で、自身の人生とじっくり向き合うことになるのです。

想定外のことが起きたとき、どうする? 自分なら……と思わずにいられない。学びが多く胸アツになる映画なのです。

【物語】

“カフェ・タランチェラ” で働くエレナ(カシア・スムトゥニアク)はバス停でトラブルに巻き込まれ、居合わせたアントニオ(フランチェスコ・アルカ)に不愉快な思いをさせられます。

その後、友人が連れてきたアントニオと再会、最初は大嫌いだったのに、彼のことを知るうちにグングン惹かれていくエレナ。念願だったカフェをオープンする計画も立ち上がり、エレナの人生は花開いていきます。

しかし、順調に見えていた彼女の人生に、誰も想像していなかったことが起こってしまうのです。
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【乗り越えてこそ人生】

エレナはとても気の強い女性で、理不尽な行いや失礼な態度を見逃すことができません。アントニオに対して強気なのも、その性格があったから。しかし、表裏がない性格ゆえに、普段はサッパリした楽しい女性です。

アントニオもシンプルな性格で、いわゆる情熱的な “ラテン系” のイタリア男。第一印象こそ最悪だったけど、結局のところ二人は相性がよかったのでしょう。

頼れるパートナーを得て、カフェオープンの夢も実現。2人の子宝にも恵まれて、エレナの人生は順調です。でも後半、彼女の前に立ちはだかるハードル(ネタバレになるので言えませんが)はちょっと高かった……。

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彼女は立ち止まり、悲しみ、苦しみ、それでも周囲の人に支えられて、問題を乗り越える……というより、受け止めるというスタンスで対峙するのです。
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【監督の身近にあった愛の物語】

この物語のきっかけは、フェルザン・オズペテク監督の身近な人のエピソードがきっかけだそうです。

「7年前のこと。僕の知り合いにエレナと同じ境遇の女性がいたんだ。大変だったとは思うけど、彼女は笑顔で夫と見つめ合っていてね。それを見たとき真の愛を強く感じたんだ」

そうなんですよね、幸福な時間にイチャイチャしているのは、まあフツーにありがちですが、避けがたい不運な出来事がどちらかに訪れたとき、パートナーがどのように守るか、どのように接するかで愛情の深さが問われる気がします。

アントニオは、最初の印象から「この人逃げるのでは?」と正直思ったりしたのですが、すでに彼にとってエレナはかけがえのない女性だったから、思い切り愛情を注いだのでしょう。

「二人の時間が長いほど、一緒に暮らしていると愛の形は変わっていきます。情熱は死ぬ運命にあって、時間と共に変化していくでしょう。でもどちらかの状況が大きく変化したときでも、相手を求めるのが真の愛だと思うのです」

と、監督は語っています。

エレナの身に不幸が訪れる前、夫婦になって10年以上たった二人の姿は、まさに倦怠期夫婦そのもの。

アントニオの何もしなさは「こういうダンナ、日本にもゴロゴロいるよね」と思ってしまうほど、けっこうリアルな夫婦像ですが、今思えば、そこには見えない真の愛が横たわっていたのです。

【フツーの女性の人生の選択】

エレナはカフェ経営の夢を実現し、結婚し、子供もいて、友達もいてという環境で、日本でもいそうな行動的な女性です。だから共感度は高い。でも、見ていて共感できるゆえに、後半エレナが抱える問題にはショックを受けますし、身につまされます。

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彼女に起きた問題に、どう対処していくのか。観客は本当にかたずをのんで見守る……というこの映画。女性同士で見て語り合ったり、またはひとりで見て、いろいろ思いを巡らせたりするといいかもしれません。深い余韻が残る、じっくり見てほしい女性映画です。

執筆=斎藤 香(C)Pouch

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『カプチーノはお熱いうちに』
2015年9月19日よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
監督:フェルザン・オズペテク
出演:カシア・スムトゥニアク、フランチェスコ・アルカ、フィリッポ・シッキターノ、カロリーナ・クレシェンティーニ、パオラ・ミナッチョーニほか
(C)2013 All rights reserved R&C Produzioni Srl – Faros Film

▼映画『カプチーノはお熱いうちに』予告編