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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、西島秀俊が主演する日韓合作のサスペンス映画『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』(1月24日公開)です。

本作の監督・脚色を手がけたキム・ソンス監督がプロモーションで来日。そこで、ソンス監督に、この映画の魅力、そして今、女子人気絶大な西島秀俊さんの魅力をたっぷり語っていただきました。


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【物語】
石神(西島秀俊)がいつものように帰宅すると、そこには妻の死体が横たわっていました。突然の出来事に気が動転する石神。そこに1本の電話がかかってきます。それは目の前で死んでいる妻からでした……。「なぜ?」その後、警察の人間だという男に追われる石神。何が起こったのかわからず、がむしゃらに逃げる彼を助けたのは、韓国人の女性記者(キム・ヒョジン)でした。石神は記者の協力を得て、謎を解明していくけれど、彼の記憶は次第にあいまいに……。自分はいったい何者なのか? 彼は必死に真相を追い求めますが……。

【複雑なストーリーは監督の罠?】
この映画の根底に流れるのはアルツハイマーという病なのですが、石神の記憶の混乱がアルツハイマーのせいなのか、何か罠を仕掛けられているのかがわからず、観客も一緒に混乱します。ソンス監督に「この複雑な物語の脚色は大変だったでしょう」と言うと、監督は「そこが狙いです」とニヤリ。

「わざと難しく複雑にして、観客の皆さんに “もう1回見たい” と言わせたかったのです(笑)。でも実はこの映画、観客の皆さんには石神と共に苦悩し、混乱する体験をしてもらおうと脚色しました。真相が明らかになったとき、スッキリとした気持ちになってほしかったのです。またこの映画では、アルツハイマーという病の怖さも描きました。この病は記憶をなくす怖さと哀しみが同居しています。石神を通して、その心情を理解していただければと思ったのです」

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【監督は西島さんのファンだった!】
ソンス監督が石神役に西島秀俊さんをキャスティングしたのは「彼の大ファンだったから」とことですが、西島さんの出演作で好きな作品を聞いてみると

「北野武監督作と黒沢清監督作ですね。僕は北野監督と黒沢監督のファンでもあり、西島さんを両監督の映画を通して見てきました。だからこの映画が日韓合作ということを幸いに、ぜひ西島さんと仕事したい! とオファーしたのです。これまでの西島さんはソフトで繊細なイメージがあったけれど、僕はもっと男らしくてタフな一面があるはずだと思い、欲を出して『ゲノムハザード』では、いままで見たことのない西島さんの魅力を引き出したいと思いましたね」

確かに、この映画には韓国映画らしい畳み掛けるアクションシーンが多くあり、西島さんは体をはってチャレンジしています。西島さんは「監督はなかなかOKを出さない。けっこう役者を追い込むタイプ」と会見で言っていましたが、ソンス監督の完璧主義が迫力あるアクションシーンを生んだのでしょう。

【韓国映画と日本映画の絶対的な違い】
今回、日韓合作ということで、スタッフも日韓が手を組んで作り上げたわけですが、苦労も多かったようです。なぜなら「映画を作るときの方向性が正反対なんですよ」と監督。それはどういうことでしょう?

「韓国映画の撮り方は、不可能な問題に直面しても諦めないで可能にしようと突き進む。とてもタフな現場なのです。でも日本映画の撮り方は、ダメなものはダメ。そのかわり不可能を作らないように準備をして撮影をしていくのですね。だから最初はぶつかりましたよ。正反対のスタイルで撮影しているスタッフが一つの現場にいるわけですから。でも、やり方が違うのだと気づき、お互いのシステムを取り入れて行こうとみんなが理解できたときから、とてもいい方向に転がりだしたのです。なんというかピタっとはまる瞬間があったんですよ」

そして監督は、日本と韓国はもっと理解しあえるはずだと熱く語ります。

「日韓合作映画の仕事をして感じたのですが、日本と韓国はもっと仲良くなれるはずです。近い関係になれる、わかりあえる可能性を感じました。みなさんにも映画を見て、そう思ってほしいですね」

【西島秀俊にそっくりな韓国の演技派俳優とは】
今回の映画で西島秀俊さんは、韓国女優キム・ヒョジンさんとコンビを組んで事件にかかわっていきますが、西島さんと共演させたい韓国男優はいますか? と聞いたところ

「ユ・ジテ(『オールドボーイ』などに出演)です。似ているんですよね~、この二人。映画に対する情熱とか価値観とか本当に似ている。それにお互いファンみたいですよ。今回、西島さんと共演した女優のヒョジンさんはユ・ジテの奥さんなのですが、彼女とも撮影中 “似てるよね~” と話していたんです(笑)。それぞれの魅力が出せる映画の題材があったら、最高のケミストリーを感じられる映画ができると思います」

キム・ソンス監督が大ファンの西島秀俊のタフな魅力を引き出した『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』。石神と一緒に苦悩し、混乱し、ハラハラしながら見てください。
(映画ライター=斎藤香)

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『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』
2014年1月24日公開
監督・脚本: キム・ソンス
原作: 司城志朗 『ゲノムハザード』(小学館刊)
出演: 西島秀俊、キム・ヒョジン、真木よう子、浜田学、中村ゆり、パク・トンハ、イ・ギョンヨン、伊武雅刀