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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは台湾のおもてなし映画『祝宴!シェフ』(2014年11月1日公開)。おもてなしの料理人として「神」と言われたシェフを父に持つヒロインが、宴席料理の素晴らしさに目覚めて、人生を再スタートさせる姿をユーモアたっぷりに描いた、グルメもお笑い好きもうならせる楽しく美味しいエンターテインメント映画です。

【物語】

売れないモデルのシャオワン(キミ・シア)の父は宴席料理の神と言われる男。亡き父はレシピノートを残してくれたけど、料理が苦手な彼女は作る気もありません。そんなとき恋人のせいで借金取りに追われるはめになった彼女は、継母パフィー(リン・メイシウ)が経営する食堂へ逃げます。彼女も料理のセンスは皆無で店は閑古鳥……。そんな中、シャオワンの父の料理を結婚式で作ってほしいというカップルが現れます。料理が苦手なシャオワンとパフィーはどんな料理でも教えてくれる料理ドクターのお願いするのですが……。

【人を幸せにする台湾流おもてなし野外宴会】

この映画に登場する、台湾の究極のおもてなしである「バンド」と呼ばれる野外宴会は、結婚式などのお祝いごとのとき、多くのお客様を招き、青空の下で行う大宴会です。そのときに出される料理を取り仕切るのが「総舗師」(ツァンポーサイ)。宴会に出向き、与えられた食材で最高の料理を提供する料理人で、シャオワンの父はこの道のプロだったのです。
この父のレシピをもとにシャオワンとバフィ―は料理を再現しようと頑張ります。そこには自分たちに料理を任せてくれたある夫婦のためにという思いと、娘が父の意志を継ぐ決心が垣間見られ、だからこそ応援したくなるのです。借金取りが追いかけて来たり、最強のライバルが出現したり、数々の障害を乗り越えて、みんなが一致団結する姿も気持ちいい!

【大阪のおばちゃんみたいなパフィーにくぎ付け!】

父親は天才料理人なのに、娘と妻はダメダメ。でもあることがきっかけで料理に目覚めていく。わりとありがちな定番ストーリーですが、サービス精神とエンターテインメントにすぐれていて楽しいのですよ。アイドル的な愛らしさのシャオワンと藤山直美にソックリな継母のパフィーのコンビが最高! 特に大阪の元気なおばちゃんノリのパフィーは、しゃべりと勢いで借金取りまで手なずけますからね、もうスゴイです。

【思わずゴクリの台湾宴会料理】

また登場する台湾料理がもうどれもこれもおいしそうで! 菊華貝柱蒸しの美しさ!焼きビーフンはスクリーンから香りまで感じさせ、記者はお腹が鳴りましたよ。そしてシンプルだけど美味確実なトマトの卵炒めはぜひ挑戦したいメニュー。また台湾各所のロケもいいんですよね。庶民的でゴチャゴチャしていて楽しそうな街並み。台湾料理食べたい気持ちが高じて台湾旅行のチケットをとってしまいそうです。

チェン・ユーシュン監督はこう語っています。

「あらゆる職業に名人はいますよね。私は多くのすぐれた先人に恵まれています。彼らの善意は作品を通して私の心に触れ、困ったときはいつでも導いてくれるのです」

この映画は料理名人へのリスペクトを感じますが、ユーシュン監督自身は映画界の名人たちへのリスペクトもこの映画に込めているでしょう。敬う気持ちと追いつきたい気持ちが『祝宴!シェフ』を前向きで明るく楽しい映画にしたのかもしれません。

『祝宴!シェフ』は、デートでも女子同士でもひとりでも楽しめる映画です。でもシャオワン演じるキミ・シアは本当にキュートなので、彼氏が鼻の下を伸ばすかもしれません。要注意です!

執筆=斎藤香(c)Pouch
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『祝宴!シェフ』
2014年11月1日より、シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
監督:チェン・ユーシュン
出演:リン・メイシウ、トニー・ヤン、キミ・シア、ウー・ニエンチェンほか
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