【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのはディズニー映画『マレフィセント2』(10月18日公開)です。アンジェリーナ・ジョリーの当たり役となった本作。前作の『マレフィセント』よりもアクションがスケールアップしていて、ちょっとびっくりな展開でした。では物語からいってみましょう!

【物語】

眠りから覚めたオーロラ姫(エル・ファニング)は、マレフィセント(アンジェリーナ・ジョリー)と共に妖精たちの国ムーア国で暮らしていました。そこにフィリップ王子(ハリス・ディキンソン)がやってきてオーロラ姫に求婚。人間が暮らすアルステッド国の王子とオーロラの結婚は人間界と妖精界の和平をもたらすと喜ばれましたが、人間を信じていないマレフィセントは素直に喜べません。実はこの結婚には妖精界を滅ぼそうとする罠が仕掛けられていたのです!

【マレフィセントが娘を嫁に出す母の心境に】

マレフィセントがオーロラ姫を眠りの呪いにかけつつも、実は密かに見守っていたことがわかった前作の『マレフィセント』。血の繋がりはなくても母と娘のような関係を築き始めた二人に感動したわけですが、本作のマレフィセントは、冒頭から母性愛が炸裂しています。フィリップ王子のプロポーズを受けて「私、お嫁に行くわ」と告げたオーロラに「あの男は人間よ。信頼ならないわ」と何気に反対しつつも、決意を固めたオーロラを止めることができず、仕方なく受け入れるマレフィセント。「女手ひとつで育てたわが子を嫁に出す寂しさ」をヒシを感じさせ、角を持ったゴスなルックスですが心はお母さんなんだなあ……としみじみしちゃいました。

【強力な姑が登場!演じるのは演技派女優ミシェル・ファイファー】

ところが、オーロラが嫁入りするアルステッド国のイングリス王妃(ミシェル・ファイファー)はなかなかのクセ者。幼少時代に妖精のせいで恐怖体験をしたことから、マレフィセントを毛嫌いしているのです。息子とオーロラの結婚を認めたのは、妖精の世界を壊滅させたいから。だから憎きマレフィセントが溺愛するオーロラ姫を自分のファミリーに迎え入れ、マレフィセントをはじめとする妖精を一網打尽にしようと画策するというオーロラ姫の姑はとんでもない悪女だったのです。

【情け容赦ない女と女の闘い】

イングリス王妃がオーロラ姫とマレフィセントを招待した晩餐会は、実は最初の戦場。イングリス王妃はマレフィセントが国王に呪いをかけたように仕向けたり、マレフィセントを部下に攻撃させて負傷させたり、やり方がいちいち姑息でズル賢いから本当に憎らしいんですよ! 1対1のガチな闘いだと負けるから、ズルい手を使うしかないんでしょうが、イングリス王妃を演じるミッシェル・ファイファーの邪悪な美魔女ぶりに迫力があり、マレフィセントvsイングリス王妃はなかなか見応えありました。

【マレフィセントってヴィランじゃなかったっけ?】

しかし、本作を見ていてふと思ったのですが、マレフィセントって本来ヴィランという立ち位置ですよね。でも正直映画『マレフィセント』のシリーズにおけるマレフィセントは、もはやヴィランじゃないと思いました。良き母であり、妖精界の正義の象徴ではないかと。見た目が真っ黒でゴスっぽいだけで、とてもいい人ですから。

でも、それでいいのかなあと。個人的にはそこがちょっと物足りなかったです。マレフィセントには、正義と悪の間で揺れ動くドラマチックなヴィランであってほしかったから。ただ『マレフィセント2』にはイングリス王妃という強烈なヴィランが誕生したので、その対比は面白かったです。

ちなみに前作『マレフィセント』同様にフィリップ王子は存在感薄かった……。フィリップ王子役の俳優もプレストン・スウェイツからハリス・ディキンソンに変わってますし。『マレフィセント』シリーズにおいて、王子の存在はお飾りなのかも。そんなフィリップ王子がちょっと不憫に思えてしまいました~。

執筆=斎藤 香 (C)Pouch

マレフィセント2
(2019年10月18日より全国ロードショー)
監督:ヨアヒム・ローニング
出演:アンジェリーナ・ジョリー、エル・ファニング、ミシェル・ファイファー、ハリス・ディキンソン、サム・ライリー、キウェテル・イジョフォー、エド・スクライン、イメルダ・スタウントン、MIYAVI、ジュノー・テンプル、レスリー・マンヴィル
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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