【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは人気シリーズ『キングスマン』の前日譚を描く『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021年12月24日公開)です。

うだつの上がらない英国青年がスパイとして成長、活躍する姿をクールなアクションで描いた『キングスマン』と同じマシュー・ヴォーン監督作。では物語から。

【物語】

舞台は1914年、平和主義のオックスフォード公(レイフ・ファインズ)は、貴族社会を倒そうとする謎の狂団が、世界中に刺客を送り込んで世界大戦を起こそうとしていることを察知。

戦争を止めるためにオックスフォード公は、仲間とともにスパイ組織を結成し、世界平和のために、謎の狂団に対抗しますが、敵は想像以上にしぶとかった……。

【『キングスマン』とは?】

”キングスマン”は、表向きは英国の高級テーラー。しかし、裏ではスパイ活動をする秘密結社。

その組織を結成したのが『キングスマン:ファースト・エージェント』の主役であるオックスフォード公なんですね。

2015年の映画『キングスマン』は、ハリー(コリン・ファース)やエグジー(タロン・エガートン)がパリっとしたスーツ姿で、キレッキレのアクションを披露するクールなスパイ映画として大ヒットしました。

2017年にシリーズ2作目『キングスマン:ゴールデン・サークル』も話題に。そしてシリーズ第3弾が本作『キングスマン:ファースト・エージェント』というわけです。

【奇想天外な作風が少し趣変わった?】

演出は前2作と同じくマシュー・ヴォーン監督。前作2作に比べると、冒険的な要素が加わり、かなりスケールがアップ、華やかさもあるのですが、キテレツさが少し影を潜めたと感じたのは私だけでしょうか。

前作までは、スマートなアクションシーンがあったかと思うと、バンバンと人が爆発してくような残酷なシーンをポップに明るく描くなど「マシュー・ヴォーンならでは!」みたいな世界がたくさん見られました。しかし本作はそのクール&ポップな個性が少し薄まった感じです。

もしかしたら、主役がエグジーではなく、オックスフォード公だからかな。レイフ・ファインズの活躍に懸けたとか? あと時代を遡っているので、モダンで風変りな演出ではなく、正攻法でいったのかもしれません。

【レイフ・ファインズがアクション頑張る!】

俳優陣での注目はやはりレイフ・ファインズ。59歳になった彼の超絶アクションをこんなに観られるとは思いませんでした。

スパイ組織のボスとして指令を出す役目かと思いきや、自分も闇組織撲滅のために、あちこちに飛んでは大立ち回りの大熱演!

一方、戦争に行くことが正義であると言い続ける息子(ハリス・ディキンソン)に対し、平和のために戦争は阻止すべきなのだ!という信念を曲げない熱い姿には説得力があり、アクションだけでなく、オックスフォード公の生き様を言動でしっかり印象づけるところは、さすが英国きっての演技派! ベテランは見せどころがわかっていますね。

加えて実在した人物、ラスプーチンを演じたリス・エヴァンスも怪演! 踊るように蹴りを入れる華麗なる(!?)アクションシーンは超楽しく、本作の見どころです。

この映画を観た後、ラスプーチンの顔をネットで検索したら、本作のラスプーチンとソックリ! リス本人の原型とどめない変貌ぶりは一見の価値ありです。

『キングスマン』シリーズ2作を観てから、本作を観ても良し、本作を観てから、前2作を見ても良し。どっちでも楽しめますので、ぜひ冬休みに『キングスマン』を制覇してください。

執筆:斎藤香 (c)Pouch

キングスマン:ファースト・エージェント
(2021年12月24日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督・脚本・制作:マシュー・ヴォーン
出演:レイフ・ファインズ、ハリス・ディキンソン、リス・エヴァンス 、ジャイモン・フンスー、ジェマ・アータートン、トム・ホランダー、ダニエル・ブリュール、スタンリー・トゥッチ、アーロン・テイラー・ジョンソン
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