【最新公開シネマ批評】映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、ウォルト・ディズニーカンパニー100周年記念のアニメーション最新作『ウィッシュ』(2023年12月15日公開)です。日本語版を観させていただいたのですが、生田絵梨花さん、福山雅治さん、山寺宏一さん、檀れいさんなどの豪華キャストでよかったですよ!

では物語からいってみましょう。

【物語】

願いが叶う魔法の王国・ロサスに暮らすアーシャの夢は、100歳になる祖父の願いを叶えること。

しかし、この国では魔法を操るマグニフィコ王が国民の願いの中から、叶える願いを決定していました。やがて彼女は王が国を支配するために願いを管理し、国民を支配していたことを知るのです……。

【“願い” をテーマにしたディズニーらしい最新作】

まさにザ・ディズニーな映画でした。本作のテーマは “願い”。

“願い” は誰でも自由に見ることができる夢であり、ポジティブな気持ちにさせてくれるし、考えるだけでワクワクするし、“願い”を叶えるために頑張ることって生きる原動力にもなりますよね。

でも、もし誰かがあなたの  “願い”を管理していたら……?

アーシャが暮らす国の王はそういう人だったんです。誰でも平等に抱くことができるはずなのに、管理されてしまうなんて!

表向きは人あたりがいいマグニフィコ王ですが、裏の顔は独裁者。国民の “願い” の中から、自分にとって都合のいいものを選んで「叶えてあげよう」なんて言うわけですよ。アーシャはそんな王の裏の顔を知り、みんなの”願い”を取り戻そうとするのです。

なにより、王が国民の “願い”を自分の支配下に置くという設定がすごいなと思いました。

【アーシャはディズニー100年集大成のヒロイン】

でも、アーシャはひとりで権力者の王に立ち向かうことができません。やっぱり仲間が必要なんです。

そんな彼女のひたむきで強い思いに応えようと登場するのが “願い星” のスター。そしてアーシャの仲良しである小ヤギのバレンティノ。

本作はプリンセス系のストーリーではないので、ラブがなく、王子様もいませんが、アーシャはディズニーが描いてきた自立した女性の集大成のようなヒロインだと思いました。

国民のために権力に立ち向かっていく姿は、ジャンヌ・ダルクのようですがディズニーアニメなので魔法対決! 本作の可愛いキャラ・スターの力を借りて、最強の魔法使いであるマグニフィコ王が焦るほどの力を発揮するのです。

【生田絵梨花の凄さ、福山雅治の低音ヴォイスの魅力】

ディズニーアニメの声優をやることが夢だったという生田絵梨花さんは、ミュージカルなど舞台経験も豊富なだけに歌唱力抜群! 「お芝居はどうなんだろう?」と思っていたけどバッチリでした。さすがオーディションを勝ち抜いただけのことはありました。

そして福山雅治さんがイケメンのマグニフィコ王の声を吹き替えています。映画を観る前は、声優をするイメージがなく「福山雅治のままになるんじゃないか」と思っていたのですが、キャラにピッタリでした!

お芝居をするときの福山さんの発声とは違い、かなり声を張っていたと思います。福山さんは何でもできるアーティストなんだな〜と、その力量にひれ伏しちゃいましたよ。

【ちょっとだけ物足りなかったこと】

総じて美しくて楽しくて可愛くて元気をくれる作品なのですが、100周年の集大成だったせいか、新しさを見出すことができなかったことが少し残念でした……。

ストーリーも含め、これからのディズニーの新たな方向性を感じさせるようなものは感じなかったんですよね。そういう新しい側面も見せてくれたら、次作への楽しみも増えるし、もっとよかったのにな〜とちょっぴり物足りないところもありました。

執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:© 2023 Disney. All Rights Reserved.

ウィッシュ』(2023年12月15日より、全国ロードショー)
監督:クリス・バック、ファウン・ヴィーラスソーン
出演:アリアナ・デボーズ、クリス・パイン、アラン・テュディック
日本語吹替版:生田絵梨花 (アーシャ), 福山雅治 (マグニフィコ王), 山寺宏一 (バレンティノ), 檀れい (アマヤ王妃), 鹿賀丈史 (サビーノ), 大平あひる (ダリア), 蒼井翔太 (ガーボ), 青野紗穂 (ハル), 落合福嗣 (サイモン), 岡本信彦 (サフィ), 宮里駿 (ダリオ)