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よしながふみさん著「きのう何食べた?」(講談社)は、同棲中のゲイカップル、弁護士の筧史朗(通称シロさん、料理上手)と美容師の矢吹賢二(通称ケンちゃん)の日常を描いた、人気料理漫画。

去る8月22日、待望の新刊第9巻がリリースされた同漫画の魅力は、なんといってもすぐにマネできそうな料理レシピの数々。そしてもうひとつは、同棲中のカップルおよび全ての既婚者にとって参考になりそうな、「他人と一緒に暮らしてゆくこと」に関する秘訣あれこれです。

本日は、全巻を所持するほど同漫画を愛読。ついでに同棲経験者でもある記者が、数あるエピソードの中から、「 “きのう何食べた?” から学ぶ、同棲&結婚生活において大切なこと」ベスト3をセレクト。

現在大切な人と生活を共にしている方はもちろん、そうでない方にとっても今後の参考になり得ると思うので、ご一読していただければ幸いです!

【第3位】料理は大切なコミュニケーションツール

ほぼ毎朝毎晩、一緒にテーブルを囲んでいるシロさんとケンちゃん。この時間がふたりの絆をより深めていることは、言うまでもありません。しかし一方で、ふたりごはんを実現できない日も、たまにはございます。

たとえば明日は自分だけ外食、パートナーであるケンちゃんのみが、ひとりでお家ごはん(9巻)。そんなときシロさんは、心をこめて「ケンちゃんの大好物オンパレード」メニューを2日分、作ります。次の日も同じメニューを食べざるを得ないパートナーのため、せめて好物を、加えて作った当日よりも一晩寝かせたほうがずっと美味しいメニューを用意。こういったさりげない気遣いができるのは、相手を深く想っているからこそ。

また料理を通じて相手を元気づけたり(6巻)、ケンカをした翌日は「俺シロさんのハンバーグが食べたいな」とリクエストし仲直りのきっかけを作る(4巻)のが、ケンちゃん流。こうしたケンちゃんのイイ嫁っぷり、すさまじい女子力の高さもまた、円満な関係を築いてゆく秘訣だと思うのです。どちらも積極的に見習っていきたいッ!

【第2位】親も大切、でも最も優先したいのはパートナー

「自分は両親が思っているよりも幸せな毎日をおくっている」、そのことを知ってもらうべく、ある年のお正月にケンちゃんを伴って実家に帰ったシロさん(7巻)。

そんなシロさんの行動に「もう死んでもいい」と涙を浮かべて喜んだケンちゃん。つつがなく平和に終わったかのように思えた帰省でしたが、そのことが原因で母親は後日、倒れてしまいます。「申し訳ないがもうケンジくんを連れてこないでほしい」と父親に言われ、頷くしかなかったシロさん。

そんな出来事を経てから初めての年末年始、ここで両親へ向けて放った彼の台詞がね、泣けるんだわ(9巻)。

「もしケンジが俺の嫁さんだったら、その嫁に正月夫の実家に来るなって伝えることが、どんなにひどい事か、わかるよね?」

無理に仲良くしてほしいわけじゃない。だけど自分にとって1番大切な人に、寂しく悲しい思いをさせることは、絶対にしたくない。こうしてその年のお正月を境に、シロさんは年末年始の帰省をやめ(とはいえ、盆暮れ正月以外は顔を出すようにすると言及)、ケンちゃんと過ごすお正月を恒例とすることを選んだのでした。「いいじゃねえか、お前と俺だけで」シロさんのこの言葉、染みる……ほんっといい男だな……。

【第1位】できる範囲で最大限、相手の思いを尊重する

基本的に男っぽいシロさんと、心がふんわり乙女なケンちゃん。そんなこともあってか、ケンちゃんの発言は女性がパートナーに発しがちなソレになりやすい。しかしながら、そんな彼の要望を聞ける範囲で聞いてあげているのがシロさんなのです。

「0時きっかり、日付が変わった瞬間に誕生日をお祝いしてあげたい」(6巻)「他の男とふたりきりにならないで」(6巻)「可愛いカフェで一緒にお茶がしたい」(7巻)などなど、ケンちゃんの思いに「めんどくせーなー」なんて絶対言わず、答えるシロさんは偉い。このちょっとした気遣いが、円満にやっていくコツなのだとつくづく思い知らされます。

一方ケンちゃんだって、ただ好き放題言っているわけではないのですよ。シロさんがストレスに感じないよう、最大限気を遣った上での上記発言なのです。感情にまかせて発言&行動してしまうときもたまにはあるけれど、その後はいつも、ちゃ~んとフォローしてるしね。近い存在にはついワガママに横柄になりがちですが、近いからこそ尊重するというこの距離感、誰かと心地よく暮らしていくためには、最も大切なことなのではないでしょうか。

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いかがでしたか? どんなに仲がよかろうと、血が繋がっていない以上、結局は他人同士。「素直であること」と「自分ばかりを押しとおす」ことは全く別物であり、この辺りのボーダーがあいまいになってしまうからこそ、関係がうまくいかなくなってしまうのではないかと、記者は自分の経験を通して思うのです。

「きのう何食べた?」は、一緒に暮らす相手との心地よい距離感を教えてくれる、貴重な作品。読めばもっとパートナーを大切にしたくなること、ウケアイですわよ。

参照元:モーニング公式サイト-モアイ
撮影・執筆=田端あんじ (c)Pouch