【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

ピックアップするのは、映画『マッチング』(2024年2月23日公開)です。土屋太鳳さんとSnowMan・佐久間大介さんが共演するサスペンス映画。佐久間さんはストーカー役なんですが、けっこうハマっていました!

ただ、ツッコミどころもある映画なので本音レビューします。では物語から。

【物語】

ウェディングプランナーの輪花(土屋太鳳さん)は恋愛に奥手なタイプ。同僚の勧めでマッチングアプリに登録した彼女は、吐夢(佐久間大介さん)という男性と出会い、デートすることに。

しかし、水族館デートに現れた吐夢は、アプリの写真の爽やかなイメージは皆無。デートに来たとは思えない地味な格好で現れ、死んだような目をした青年でした。

いい印象を持たなかった輪花ですが、吐夢は彼女に執着し、ストーカー化してしまうのです。

【キャストは大健闘!キャスティングがバッチリ】

映画『マッチング』は、まず土屋太鳳さんと佐久間大介さんのキャスティングが良かった!

ウェディングプランナーとして数々のカップルの結婚式を成功へと導いてきたのに、自分の恋愛はさっぱり……というヒロインの輪花は土屋太鳳さんにハマっていました。彼女自身、いつも一生懸命なイメージがあり、それをキャラクターに大いに活かしている感じがして、ヒロインに共感しやすかったです。

また佐久間大介さん演じる吐夢もピッタリ。陰からジトっとした目で輪花を見つめている姿が不気味で……。吐夢は、SnowManのときに見せる明るく朗らかな佐久間さんとは真逆のキャラクターですが、漫画やアニメ好きのオタク気質のある佐久間さん。好きなものへ執着心をねじれた形で表現し、吐夢というキャラクターを作り上げていたと感じました。

このふたりのキャスティングがハマった時点で映画としては成功なのでは!と思ったのですが、ちょっと残念な一面もあったのです……。

【輪花の身に起こる連続悲劇】

輪花を吐夢がストーキングするのと同時に、マッチングアプリで出会ったカップルの連続殺人事件が起こります。その連続殺人の被害者のひとりは輪花にアプリを勧めた同僚……。加えて、輪花の父の不倫やそのあとに父の身に起こる悲劇など、輪花の身に不幸が雪崩のように押し寄せてきます。

そんな輪花を助けてくれるのは、マッチングアプリを運営している会社のプログラマー影山(金子ノブアキさん)。

輪花も彼を信頼して心を寄せていく……。ここまで見ていて思うのは「吐夢の恋心はどうなるの?」ってことです。

恋のライバル登場で、吐夢の歪んだ恋心がますます彼を狂わせ、とんでも無い事態へと発展するのかと思ったら、輪花の身にいろいろなことが起こりすぎて、吐夢の存在感がどんどん薄れていくんですよ。吐夢、不気味でいいキャラなのに〜。そこがすごく残念!

【佐久間大介の見せ場は後半にも】

輪花も知らなかった父の秘密、そして父の死の真相。

その真相には吐夢も関係していた……など、後半、怒涛のように明かされる真実。輪花はよく正気を保っていられるなと思いましたよ。また怪しい吐夢の別な一面も見えてきたりして、佐久間さんの見せ場も後半用意されていてホッとしました。

【盛り込むところはそこじゃない?】

本作は『ミッドナイトスワン』の内田英治監督作なのですが、本当にサービス精神旺盛な監督だなと思いました。

観客を楽しませようとさまざまな要素を盛り込みまくっていますから。でも未消化に終わったエピソードもあったし、輪花と吐夢の関係の変化こそ、もっと見せてほしかった。盛って欲しいのはそこだったのになあ〜と、個人的にはモヤモヤ……。


土屋太鳳さんの大熱演、佐久間さんの怪しい魅力に支えられている映画『マッチング』。歪みまくった狂気の愛の真相が知りたい人は、ぜひ映画館でご覧ください。

執筆:斎藤 香(c)pouch
Photo:©2024『マッチング』製作委員会

マッチング
(2024年2月23日(金・祝)全国ロードショー)
監督・脚本:内田英治
原作:内田英治『マッチング』(角川ホラー文庫刊)
出演:土屋太鳳
佐久間大介  金子ノブアキ
真飛聖 後藤剛範 片山萌美 片岡礼子
杉本哲太 斉藤由貴